蝶の舌
フェルナンド・フェルナン・ゴメス
TVで。字幕。☆☆☆☆★
スペイン内戦前夜を描いたなかなかの佳作。
ちとまったりしているので、途切れ途切れに二〜三日かけて見るのがちょうどいいかもしれない。
喘息持ちの少年モンチョは、初めて学校に通うことになる。初日、恐怖心から何も喋れず、しかもお漏らしして逃げ出したモンチョだったが、教師のグレゴリオが直接やってきて謝ってくれる。
翌日から学校に通うようになるモンチョ。優しく、色々なことを教えてくれるグレゴリオにすっかり懐く。
親友も出来、幼い初恋もあり、兄と共にバンドの遠征に出かけ、大人の世界をちょっぴり垣間見る日々。
そんな日常はグレゴリオ先生の引退と共に終わりを告げる。
詰め込みすぎなぐらいエピソードを詰め込んでいるが、日常をただ流しているだけなのでそういう印象はない。まったり、ゆっくりした時間が流れているが、その中でもモンチョの父親が共和党の人間であることが描かれたり、先生が無神論者であると言われている。
しかし差別をせず、生徒のことを真摯に思い、モンチョが発作を起こしたときには咄嗟の行動で助け彼の初恋を応援する。素晴らしい教師だが、時代は彼にとって不幸極まりない方向へ進む。
モンチョの初恋もいいが、バンドの遠征先での兄の純愛もいい。遠征前に聴いたラブソングを突如吹き出し、それをアドリブで応援する仲間もいい。
だがその仲間やモンチョの初恋の相手、親友の父親、そしてグレゴリオ先生までがラストには連れて行かれる。
母親が息子や夫に罵るよう強要する場面では、自分たちの身を守るためには仕方なかったとはいえ、見ているこちらが身を切られるような思いになる。
蝶の舌。蝶にはゼンマイのような舌があるんだ。顕微鏡が届いたら見せてあげよう。――けれどそれは叶わず、モンチョは先生へ罵倒の言葉と共に投げかける。
あんまりといえばあんまりな、後味の悪いラスト。